不動産ドクターです。
今回はちょっと難しいお話。。。
城南地域は借地がとても多いです。
借地権付きの物件を買う選択肢は非常に合理的だと思います。
しかし、一方で、地主さん次第では難しい問題に発展することが有ります。
・将来、借地権を売却する際に、その売却を地主が認めない
・建て替えをしようとしても地主が認めない
・条件変更をしたくても地主が認めない
・更新を地主が認めない
などのトラブルが発生することが有ります。
その場合で話が決裂してしまった場合はその救済措置として
『借地非訟(しゃくちひしょう)』という制度が有ります。
裁判所に申し出て、審理をしたうえで、裁判所が『承諾』の決定をだすというもの。
地主が承諾しなくとも、裁判所が『承諾』の決定を出してくれるので
実行にこぎつけられるというものです。
しかし、このような制度が有るからと言って、これを使う局面になる事態は避けたいものです。
借地権付きの物件を購入する場合は、建物のみならず、地主のキャラクターや性格・将来にわたる考え方などもよくよくチャックしなければなりません。
借地非訟とは
1 土地の貸し借り
土地を借りて利用する場合の契約(「借地契約」といいます。)には
(1) 土地賃貸借契約(地代を支払うもの)
(2) 土地使用貸借契約(ただで使わせてもらうもの)
(3) 地上権設定契約(地上権という物権を設定するもの)
があります。
2 借地借家法との関係
借地非訟事件は,借地契約のうち借地借家法に定められた借地権を扱います。
したがって,
(1) 借地契約は,土地賃貸借契約または地上権設定契約であることが,
(2) 借地権の目的である土地(借地)は,建物を建てるために借りた土地であることが必要です。
3 借地非訟事件の種類
借地非訟事件として取り扱うことができる問題は,次の4種類です。
(1)借地条件変更申立事件(条件変更事件)
借地契約には,借地上に建築できる建物の種類(居宅・店舗・共同住宅など)・建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)・建物の規模(床面積・階数・高さなど)・建物の用途(自己使用・賃貸用・事業用など)等を制限している例が多く見られます(よくあるのが,「借地上の建物は,木造建物に限る」といったもので,このような制限を借地条件といいます。)。
借地権者が,これらの借地条件を変更して,別の条件の建物に新しく建て替えたい場合(たとえば,「木造建物」を「ビル」に建て替えたい場合)には,土地所有者との間で借地条件を変更する合意が必要になりますが,土地所有者が条件変更に反対して,合意できない事態が生じます。
このような場合,借地権者は,借地条件変更の申立をして,裁判所が相当と認めれば,借地条件変更の裁判を受けることができます。
(2)増改築許可申立事件(増改築事件)
借地契約には,借地上の建物の建替え・増築・改築(修繕)等をする場合には土地所有者の承諾が必要であると定めている例が多く見られます。
借地権者が,家を建て替えたい場合,土地所有者の承諾を得る必要がありますが,土地所有者が反対して承諾が受けられないことがあります。
このような場合,借地権者は,増改築許可の申立をして,裁判所が相当と認めれば,土地所有者の承諾に代わる増改築の許可の裁判を受けることができます。
(3)賃借権譲渡許可申立事件(譲渡事件)
借地契約が第1の1の(1)の土地賃貸借契約の場合,借地権者が借地上の建物を譲渡する場合には,譲渡について土地所有者の承諾が必要です(民法612条)。
借地権者は,譲渡について土地所有者の承諾を得る必要がありますが,土地所有者が譲渡に反対して承諾を受けられない場合があります。
このような場合,借地権者は,賃借権譲渡許可の申立をして,裁判所が相当と認めれば,土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
(4)競売または公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(公競売事件)
裁判所の競売手続で借地上の建物を買い受けた人は,借地権も一緒に取得することになる関係から,借地権の譲受けについて土地所有者の承諾が必要です(民法612条)。
借地権者は,譲受けについて土地所有者の承諾を得る必要がありますが,土地所有者が譲受けに反対して承諾を受けられない場合があります。
このような場合,借地権者は,競(公)に伴う賃借権譲受許可の申立をして,裁判所が相当と認めれば,土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
この申立は,競売代金の納付の日から2か月以内にしなければならないので,ご注意下さい(借地借家法20条3項)。
(5)借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(介入権事件)
上記の(3)(譲渡事件)及び(4)(公競売事件)の場合,土地所有者には借地権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利(「介入権」と呼んでいます。)が与えられています。
土地所有者は,審問手続の中で,裁判所が定めた期間内に限り,介入権を行使する申立をすることができます。
裁判所が定めた期間内に介入権の申立がありますと,原則として,土地所有者が借地権者の建物及び借地権を,裁判所が定めた価格で買い受けることになります。
4 借地非訟事件手続のあらまし
借地非訟事件の手続は,おおよそ,以下の手順で進行します。
借地権者(「申立人」といいます。)が,民事第22部に申立書を提出する。
↓
裁判所が,申立書を土地所有者(「相手方」といいます。)に郵送し,第1回審問期日を定める。
↓
裁判所は,東京地裁民事第22部の審問室で第1回審問期日を開き,当事者から事情を聴く(必要に応じて第2回,第3回と期日を重ねる。)。
↓
裁判所が鑑定委員会に,承諾料額,賃料額,建物及び借地権価格等について意見を求める。
↓
鑑定委員会が借地に出向き,現地の状況を調査する(当事者も立ち会う。)。
↓
鑑定委員会が裁判所に意見書を提出し,裁判所は意見書を当事者に送付する。
↓
裁判所が,鑑定委員会の意見について,当事者から意見を聴くための最終審問期日を開き,審理を終了する。
↓
裁判所は決定書を作成し,当事者に送付する。
以上の流れを大体の所要期間を入れて図示すると以下のようになります。